新しい年を迎えて、最初の月曜日。
鍵を廻した指先を吐息で温めながら、時折雪の舞い散る中をひとり静かに歩いていた。
そっと肺に送り込んだ真冬の空気は、忽ち軀の奥にまで達して、凛と沁み入る微かな痛みに瞳を閉じた。
遠く澄んだ蒼穹を見上げると、木漏れ日のような眩い微笑みを思い出し、逢いたさが募った。
三学期の始業式までは未だ数日残っていたが、いつもの会長の気紛れな一声で、生徒会の仕事始めが今日に決まった。
そろそろ冬休みに飽きてくる頃で、役員会の名の下に、一堂に会して持て余した宿題を片付けるのも悪くない案だと思えた。
早々に終わらせていた俺は、有無を言わせず教授役に任命され、相変わらずの強引さに振り回されるのは、今年も同じと悟った。
とは言え、定められた二週間の休暇に、多少の物足りなさを感じていたのが本音で、みんなと過ごす賑やかな時間を心待ちにしていた。
校舎に近づくにつれて部活動の練習する声が聞こえ、直ぐにでも懐かしい日常に溶け込んで、寂しさを忘れてしまいたかった。
最後に声を聞いたのは、クリスマスの午後に掛かってきた一本の電話で、慌しい帰国間際に時間を割いてくれたのが、素直に嬉しかった。
久し振りに親許に戻れると話す声に、次は何時と聞けないまま、空旅の無事を祈って通話を終えた。
それきり途絶えた連絡は、先輩と後輩以上の間柄ではない二人の距離を、如実に物語っていた。
厭という程承知していた筈の事実を、耳奥に留めた短い会話で、何度も掻き消そうとした。
―――先輩。
本当はずっとずっと、待ち続けていた。
逢えるとしたら十日振りで、約束も無いのに予定よりも早く家を出て、我ながら子供みたいだと苦笑した。
「先輩、待って。」
空耳ではない優しい声に、この密やかな片恋を大切にしたいと願った。
ゆっくりと振り向けば、少し離れた先で佇む、小春日和の暖かさ。
ただ其処に居るだけで倖せ過ぎて、その面影に胸を焦がした時間さえも、深い意味があったのだと理解した。
どうしてそんな風に、ふわりと微笑むことが出来るんだろう。
総てを包み込む寛大さは、切なくなるほど強く心を惹きつけて、失う怖さに仄かな想いを幾重にも封じた。
瞼を閉じて世界が暗闇になっただけで、生きてはいけないと思った。
「……太陽みたいだ。」
コツリと靴音を響かせて隣に並ぶと、身に纏った微かな香りが鼻腔をくすぐり、奥底に沈んだ澱が浄化されていく気がした。
小さく洩らした言葉を不思議そうに反芻する横顔は、雲間から射す穏やかな光に似て、降り注ぐ僥倖に瞳を細めた。
その仕草に瞬きすると、真意を汲みかねた様子で艶やかな金糸の一房を指し、ジノは僅かに首を傾げた。
「